26.創業・出店・経営改善計画書作成のコツ

平成28年1月税理士・会計事務所様へのメッセージ
GPC-Tax本部会長・一般社団法人銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司

金融機関提出用の創業・出店・経営改善計画書等の作成に手間がかかります。また、クライアント自身の方針が曖昧な時は、計画書自体を作成できずに頓挫してしまいます。どのように対処すればよいでしょうか?(正会員事務所様より)
これらの計画書には、(ほぼ)一つの答えがあります。その答えに向かって計画書を作成します。
財務部長が作る計画書の答えは(ほぼ)一つです。

解説します

◆『新・税理士』として金融機関対応業務を受託したら、

様々な計画書を作成しますが、それらは、財務部長が作る計画書です。
計画書の目的をしっかり認識したうえで、必要最小限のスペックで作成します。
  • 創業融資を受けるためには、『創業事業計画書』が必要です。
  • 新規出店資金を調達するためには、『出店計画書』が必要です。
  • リスケジュールを金融機関に承諾してもらうためには、『経営改善計画書』が必要です。

◆その目的や予算によって、その内容は大きく変わります。

  • 相応の予算をいただいて、当然相応の経験とスキルの有る人が、その事業の将来性や戦略を立案して計画書を作成するケースもあります。業種に特化した専門チームや、戦略立案の精鋭を組成して対応します。専門のコンサルティングファームなどが行います。当然、相応の予算を要します。
  • 一方、我々が作成する計画書は、上記とは異なり、以下が目的です。
  • 経営者のイメージを数値計画に落とし込んであげること
  • そのイメージが、社会通念を逸脱していないこと、蓋然性があることを証してあげること
  • 経営者に必要な経営数値(必要な売上高や粗利益率・経費)などをわかり易くお伝えすること

前者と後者を明確に分けて対応しないと、計画書作成業務に多大な工数を要することになります。
(計画書を立案できないことにもなりかねません。)

『新・税理士』は、財務部長であって、専門のコンサルティングファームではありません。

◆各種計画書作成のコツをお伝えします。

創業融資を受けるための『創業事業計画書』作成のコツは…

創業者様がイメージする事業が、予算内、一定期間内に軌道に乗ることを証する計画を作成してください。

  • 粗利益率や固定費から逆算して、返済後資金繰り分岐点を向かえる時の必要売上高が、過大でないこと
  • 起業半年後を目処に、資金繰りが返済後黒字に転換すること
  • 黒字までの期間も、ある程度の余裕を持って資金繰りが回せること

この条件を満たせば、一旦創業は成功です。後の飛躍は別の話です。創業者様が、本計画書の進捗に自信を持ってもらえれば計画書は合格、進捗が難しいとなれば、経費や投資計画を見直すことになります。

※創業計画書は、創業が成功する計画、軌道に乗る計画です。天下を取る、世に問う計画ではありません。大成功のシナリオを作り、その実現性を疑問視されるような壮大な計画は百害あって一利なし、無意味です。

新規出店資金を調達するための『出店計画書』作成のコツは…

クライアントがイメージする出店が、予算内、一定期間内に軌道に乗ることを証する計画を作成してください。考え方は、創業事業計画書と同じです。

  • 粗利益率や固定費から逆算して、返済後資金繰り分岐点を向かえる時の必要売上高が、過大でないこと
  • 出店半年後を目処に、資金繰りが返済後黒字に転換すること
  • 黒字までの期間も、ある程度の余裕を持って資金繰りが回せること

この条件を満たせば、一旦出店は成功です。後の飛躍は別の話です。クライアントが、本計画書の進捗に自信を持ってもらえれば計画書は合格、進捗が難しいとなれば、経費や投資計画を見直すことになります。

リスケジュールを金融機関に承諾してもらうための『経営改善計画書』作成のコツは…

一定期間返済猶予(=リスケジュール)を受けることで、その会社・個人事業者様の経営が健全化することが条件になります。返済猶予を行っても、経営が改善する見込みがない時は、金融機関は返済猶予を受け付けません。

  • 5年以内に債務償還年数が10年以内、かつ、資本正(債務超過でない)を達成すること
  • 上記期間内、自力で資金繰りを回せること

前倒しは可を前提に、許される最長期間を想定して上記の条件をクリアーできる最低限の計画を立案します。どのように経営改善するかではなく、クライアントにとって、実現すべき計画書の色合いが強くなります。

『新・税理士』(=財務部長の代行業務)として作成する各種計画書は、必要条件から逆算して作成することになりますが、経営者に対する財務面からの指針として極めて有益です。

併せて、金融機関提出用の計画書になります。

以上、ご確認ください。

※詳細は、金融機関対応力習得研究会、各対象講座で詳しく解説しています。

※第16回CD連続講座(平成28年2月号)でも解説しています。(2月1日発送予定)