トランプ関税が日本の消費に与える影響[第607回]

…輸出収益の減少による国内所得の縮小懸念!

(毎週火曜日配信)税理士事務所様の経営を考えるコラム
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司

貴社の経営、クライアントの経営支援のネタにご利用ください。

トランプ大統領が関税強化を打ち出し、日本からの輸入品にも高率な関税を課す方針が現実化しました。
自動車や精密機械、金属部品、電子機器といった主要輸出品目に対して最大24%の関税が課される見通しで、日本経済への打撃は避けられません。
(※4月11日時点では90日間は猶予とされています。)

最大の影響は日本企業の輸出収益の減少による国内所得の縮小です。日本は長年、輸出企業が成長を牽引してきました。
トヨタや日立といった大手メーカーはもちろん、その下請けや協力企業として関わる中小企業が多く、地域経済を支えています。
これら輸出企業の業績悪化は、賞与・雇用・設備投資の抑制をもたらし、間接的に家計所得の減少=国内消費の冷え込みにつながります。

加えて、関税措置が円安を誘発し、輸入価格の上昇→物価の押し上げにつながれば、実質可処分所得はさらに減少します。
つまり、所得が減り、物価は上がるという悪循環により、日本の消費者は支出を控える傾向を強め、特に耐久財や外食、小売などの消費支出が減速することが予測されます。

■ 消費低迷が中小企業に与えるダメージ

中小企業の多くは内需依存型であり、消費低迷は直撃弾になります。特に打撃を受けるのは以下の業種です。

  • 飲食・小売業:外食やレジャーへの支出が抑制され、来店客数や客単価の減少に直結します。
  • サービス業:理美容、教育、旅行などの支出は「真っ先に削られる」傾向があり、契約キャンセルや利用頻度の減少に悩まされます。
  • 製造業(BtoB):大手企業からの発注減少や価格引き下げ圧力により、利益率が悪化し、資金繰りにも支障をきたします。

中小企業は人材・資本・情報面で制約が多く、急な外部環境の変化に脆弱です。
売上減少が一定期間続くだけでも、倒産リスクが高まります。

■ 中小企業経営者が打つべき施策

このような状況下で中小企業経営者がとるべき施策は、短期的な収益防衛と、中長期的な構造変化への備えを両立することです。
以下に具体策を示します。

  • 固定費(特に人件費・家賃・光熱費)の見直しと可変化。
  • 在庫管理の徹底と仕入れロスの削減。
  • 補助金等の活用。
  • 高価格帯から低価格帯への商品ライン拡充や小分け・サブスクモデルへの転換。
  • 家庭向け(BtoC)への事業転換や「おうち需要」への対応。
  • 節約志向の消費者向けに「高コスパ」「長持ち」「健康志向」などの訴求軸を打ち出す。
  • ECサイトやモール(Amazon、楽天など)での販路強化。
  • 地方自治体・地域企業と連携した「地域経済圏内取引」の活性化。
  • 海外(アジア圏)への輸出支援策を活用した新規開拓。
  • 来店客数の減少を補うため、リピーターづくりやファンマーケティング(SNS・LINE活用)の推進。
  • 顧客満足度の向上→口コミ・紹介による集客への流れを強化。
  • 正社員にこだわらず、副業人材・パート・フリーランスとの柔軟な連携体制を整備。
  • DXや業務効率化ツールの導入で、省力化と労務費削減の両立を目指す。

トランプ関税は一国の政治判断に端を発する外的ショックですが、これを“他責”としてとどまるのではなく、自社のビジネスモデルを見直す契機と捉えることが重要です。
これからの時代、外部環境の変動は常態化します。
だからこそ、リスク分散、構造転換、収益の多様化、そして変化に柔軟に対応できる経営体制の構築が、中小企業の生存と発展の鍵となります。

厳しい環境の中でも、環境の変化を捉えて行動を起こす企業こそが、次の成長の波をつかむことができます。
今こそ、危機をチャンスに変える“変化対応型経営”への転換が求められています。

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