中小企業が高収益を実現する7つの要諦と実例[第631回]

…「当たり前」を愚直に実践する

(毎週火曜日配信)税理士事務所様の経営を考えるコラム
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司

貴社の経営、クライアントの経営支援のネタにご利用ください。

中小企業が高収益を上げる背景には、偶然ではなく明確な共通点があります。
資本力や規模で大企業に及ばなくとも、戦略と工夫次第で高い利益を出すことは可能です。
ここではその「7つの要諦」を実例とともに整理します。

■1.高付加価値型ビジネスモデルの構築

価格競争に巻き込まれず、他社に代替されない存在になることが第一歩です。独自技術やブランド力を磨き、「選ばれる理由」を確立する必要があります。

●事例:愛知県の精密部品メーカー

大手自動車メーカーと共同開発できるほどの独自加工技術を保有。下請けではなくパートナーとして扱われ、利益率は業界平均を大きく上回っています。

■2.一人当たり生産性の最大化

「社員数を増やして売上を伸ばす」発想では限界があります。高収益企業はむしろ少数精鋭で、一人当たり粗利益1,000万円を目安に経営を組み立てています。

●事例:東京都のIT人材派遣会社

安売りせず、特定分野に強い技術者だけを育成・派遣。一人当たり粗利益は1,200万円を超え、給与水準の高さが採用力を強化する好循環を生んでいます。

■3.適切な価格設定と値上げ力

物価・人件費の上昇が続く中で、利益を守る鍵は「納得感のある値上げ」です。根拠を示し、顧客に理解を得る力が問われます。

●事例:福井県の繊維加工業者

エネルギー使用量を数値化し、環境負荷低減の成果を可視化。その価値を示したうえで工賃を大幅に引き上げました。
単なるコスト転嫁ではなく、「社会貢献と一体化した値上げ」として顧客に受け入れられました。

■4.運転資本・資金繰りの徹底管理

利益が出ていても資金繰りが破綻すれば会社は倒れます。高収益企業は在庫回転・回収・支払いを細かく管理し、資金効率を高めています。

●事例:大阪府の工具卸会社

回収サイトを90日から60日に短縮し、在庫管理システムで不良在庫を削減。結果、営業利益率は5%から8%へ改善。資金管理が直接的に収益力を押し上げた例です。

■5.成長性とリスクのバランスを取る

一点集中ではなく、複数の収益源を持ち、環境変化に備えることが必要です。市場が縮小しても別の柱があれば安定収益を維持できます。

●事例:京都府の老舗菓子メーカー

観光客依存から脱却し、ECや海外輸出を強化。コロナ禍でインバウンドが途絶えても売上を維持しました。市場を分散させたことでリスクを吸収できた好例です。

■6.強い組織文化と人材活用

人が辞めない仕組みは、中小企業の競争力そのものです。成果を可視化し、やりがいと報酬を結び付けることで社員は粘り強く力を発揮します。

●事例:長野県の精密機械製造業

社員全員に「一人当たり粗利益」の目標を共有し、達成度が賞与に直結。
自分の努力が会社の成果につながると実感でき、定着率が大幅に向上。技術が社内に蓄積し、競争力を高めています。

■7.経営者の先見性と意思決定力

最後に欠かせないのは、経営者自身の「先を読む力」です。環境変化を見越して早めに手を打つことで、収益機会を確保できます。

●事例:広島県の自動車整備会社

最低賃金上昇を見越し、早期にDXを導入。予約や顧客管理をアプリ化し、少人数で効率的に運営。さらにEV整備に対応できる人材を育成し、新しい収益源を確立しました。

中小企業が高収益を実現する共通項は、

  • ◎独自の付加価値で「比較されない存在」になること
  • ◎少数精鋭で一人当たり生産性を高めること
  • ◎顧客を納得させる値上げ力を持つこと
  • ◎資金効率を徹底的に管理すること
  • ◎市場の変化に対応できる事業ポートフォリオを組むこと
  • ◎人材を定着させ、組織力を収益源にすること
  • ◎経営者が先見性を持ち、決断を恐れないこと

の7点に集約されます。

これらは「当たり前」に見えますが、愚直に実践し続けられる企業は少数です。
高収益企業は例外なく、この原則を徹底し、自社の現場に落とし込んでいます。
中小企業にとって、資本力や規模の差を埋める唯一の道はここにありそうです。

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