中小企業は人を雇い過ぎ![第611回]

…中小企業が目指すべき「人件費最適経営」
(毎週火曜日配信)税理士事務所様の経営を考えるコラム
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司
貴社の経営、クライアントの経営支援のネタにご利用ください。
多くの中小企業では、「人が足りない」「人を採らなければ仕事が回らない」と思い込み、常に採用活動に多くのリソースを割いています。しかし、その前に考えてください。本当に人を増やすことが、御社の経営にとって正しい判断でしょうか?
現実には、「人を増やすほど経営が苦しくなる」という悪循環に陥っている中小企業が少なくありません。
その根本的な原因の一つが、「一人当たりの粗利益額」が低すぎるという問題です。
■一人当たり粗利益額1,000万円以下では、十分な報酬を支払えない
※労働分配率を50%としても、一人当たり人件費は500万円、支給できる報酬総額は最大で400万円程度です。
企業経営において重要なのは、売上よりも「粗利益額」、そしてその粗利益を生み出す「人員あたりの生産性」です。
目安として、一人当たり粗利益額が最低でも1,000万円を下回るようであれば、その企業の収益構造には無理があります。
たとえば、従業員一人あたり粗利益額が800万円の場合、そこから給与、社会保険料、福利厚生費、設備費、間接コストを差し引くと、会社に残る利益はほとんどありません。
結果として、経営者の報酬もままならず、従業員の給与アップも実現できない。これでは誰も幸せになれません。
■人数に頼らず、少数精鋭で経営する発想を
ここで発想を変えてみましょう。
「同じ仕事量を、少ない人員でやり切る」。これが中小企業が生き残るための本質的な経営戦略です。
人を減らせば、一人あたりの負担は一時的に増えるかもしれませんが、同時に人件費全体は軽くなり、残った人により多くの給与を支払うことができます。
つまり、「少人数でしっかり儲けて、しっかり分配する」構造です。
この考え方を、従業員にも丁寧に伝えることが大切です。
「人数が少なくなった分、効率化の工夫と協力が必要になる。でも、その分、会社も君たちの給料をきちんと上げていく」というメッセージを明確にするのです。
■生産性向上のために取り組むべき具体策
では、どうすれば一人当たりの生産性を高められるのでしょうか?
以下のような取り組みが有効です。
- 業務の見直しと削減
やらなくていい仕事を減らす。非効率な会議、過剰な報告、意味の薄いルーティンなどを排除する。 - デジタルツールの活用
クラウド会計、チャットツール、タスク管理アプリなどを導入して、情報共有と作業時間を短縮する。 - マルチスキル化の推進
1人で複数の役割を担えるよう教育・訓練を行い、チーム全体の柔軟性を高める。 - アウトソーシングの活用
専門性の高い業務や事務作業などは、外注を活用することで内部リソースを集中させる。
■生産性を高める企業風土を築く
これらの施策を実行するには、「みんなで改善していく」という企業文化が欠かせません。
単に上から命じるのではなく、社員一人ひとりが「自分ごと」として、生産性向上に取り組む意識を持てるよう、仕組みや評価制度を整えていくことが重要です。
たとえば、定期的に業務改善提案を集める制度や、成功した改善事例を社内で表彰する仕組みなどは、社員の意識と行動を変える力になります。
■経営者の決断が企業の未来を決める
人件費は、経営資源の中でも最大級のコストです。
だからこそ、「安易に人を増やさない」という判断こそが、企業の持続的成長につながります。
目指すべきは、「一人当たり粗利益額1,000万円以上」を目標とした、筋肉質で強い会社です。
人を雇い過ぎない、効率化を徹底する、社員にしっかり報いる。
この経営方針を掲げ、実行することこそが、中小企業がこれからの時代を勝ち抜くための確かな道なのではないでしょうか。
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