創業時に陥りやすい6つの財務無策(実例)と4つの楽観主義![第431回]

創業で失敗しないために!

…創業で失敗しないために!

(毎週火曜日配信)税理士事務所様の経営を考えるコラム
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司

※クライアントの経営支援にお役立てください。

その事業が将来立ち上がるかどうか?
こんなことはだれにもわかりません。
それでも論理と蓋然性から、高い確率で重要な問題点を指摘して助言することは出来ます。
(※この確率にあてはまらない天才事業家は除外する前提で読んでください。)

■以下は、創業時に陥りやすい間違え、財務無策の実例です。

1:創業1期目が赤字、2期目に追加の資金調達(融資)を目論む計画
創業1期目が赤字の時、2期目の資金調達は容易ではありません。創業時の自己資金と創業融資で、黒字化まで自力で持っていかないと、次の融資はほぼ受けられません。
計画の見直しが必要です。(財務無策です。)
2:創業自己資金300万円で初年度の資金調達金額3,000万円とする計画
計画自体が無謀に見えます。創業時に、こんな多額な融資はほぼ受けられません。計画の見直しが必要です。(財務無策です。)
3:創業自己資金50万円の会社が、創業1期と2期で累計6,000万円の赤字を出す計画
どんなに経歴や計画書が立派であっても、この計画を支持する金融機関はありません。そもそも力不相応な計画に見えます。計画の見直しが必要です。(財務無策です。)
4:創業三ヵ年計画の資金繰りの辻褄が合っていない計画
資金繰り計画書を作ったら資金ショートします。資金繰り計画を持ち合わせていないので、矛盾に気づいていません。計画の見直しが必要です。(財務無策です。)
5:創業三ヵ年計画に、創業融資の返済原資を見出せない計画
返済を賄う利益を計画段階から計上できていません。返済原資の無い融資を金融機関は行いません。計画の見直しが必要です。(財務無策です。)
6:創業自己資金300万円、資金的にはぎりぎりの計画ですが、創業融資をとりあえず受けない計画
「とりあえず自己資金でやってみて、必要になれば融資を受けたい。」この考え方は根本から間違えています。行き詰まった時に融資を受けられる可能性は高くありません。
最初に創業融資を受けるべきです。(財務無策です。)

■併せて、創業時に陥りがちな楽観主義について言及いたします。

1.『計画通りに進む』との楽観主義!
○10期目の会社が立てた11期目の計画、概ね計画通りに進捗するでしょう。
○3期目の会社が立てた4期目の計画、計画の見積もりには不安が残ります。
○創業時に立案した1期目の計画、過度に保守的に見積もらない限り当たりません。

計画通りに事業は進まないのです。これが実態です。それでも計画は目安として必要です。目安を立てて、ずれを確認しながら事業を運営するために必要です。
2.『少ない費用で立ち上がる』との楽観主義!
計画通りに進捗しなかったとき、それを解決するのは時間です。当初立てた仮説を修正しながら試行錯誤を繰り返します。
事業自体が的外れでなければ、時間を要しながらも着地します。計画に対して余分に費やした時間を埋められるのは資金・お金しかありません。
資金不足で頓挫する、これは時間を稼ぐ資金を確保できないとの意味です。
3.『資金が必要になればお金は借りられる』との楽観主義!
計画通りに進まずに、時間が必要、時間を確保するための資金が必要になった折に、金融機関に駆け込んで、資金を求めようとします。これは原則間違えです。難解です。
計画が遅れた、時間を掛ければ軌道に乗る、この蓋然性の説明は容易ではありません。
金融機関は原則、足元の進捗・実績を基準に、将来生み出すキャッシュフローを勘案して融資の可否を判断します。
(金融機関が有するのは「日傘」であって「雨傘」ではありません。)

◎どうすればよいか…計画をしっかり立案します。一方で、その計画を鵜呑みにせずに計画が遅れることを想定して資金を最大限調達し続けること、これが正解です。
4.『安くしても売れればやって行ける』との楽観主義!
「とにかく売れさえすれば何とかなる」、このように考える社長様も少なくありません。
「売れなければ何ともならない・始まらない」は正解ですが、「とにかく売れさえすれば何とかなる」は正しくありません。
一定額以上売れた時には一定以上の利益を捻出できる値決め・価格設定は経営上極めて重要です。
手間暇をしっかり掛けて、よくよく考えて、シミュレーションをしっかり行って、腫物に触るように慎重に決めてください。
とにかく値決めに対しては全身全霊を注いでください。

◎どうすればよいか…安売りは絶対にしない、価格を売るための道具に使わない、安売りでしか勝負できない事業なら、事業自体を再考してください。

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