中小企業の経営分析手法(その1)[第521回]

…BCGマトリックス

(毎週火曜日配信)税理士事務所様の経営を考えるコラム
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司

今の日本企業に突き付けられている最大のテーマは事業の再構築ではないでしょうか。
何十年以上も、同じ事業領域で、同じようなやり方で・・・ただただ繰り返す経営に明るい未来はありません。
事業計画と称して、過去を未来に延長しただけの事業計画?だけでは不十分です。

事業を抜本的に見直すための分析手法をご紹介します。
BCGマトリックスは、事業のポートフォリオを明確にし、効果的な戦略を策定するための鍵となるツールです。以下は、このマトリックスを中心にした中小企業の経営診断のための指針です。

1. 経営ビジョンと目標の確認

中小企業のリーダーは、企業のビジョンや中長期的な目標を明確に持っていることが前提です。これが戦略策定の基盤となります。

2. 事業ポートフォリオの整理

中小企業も多様な製品やサービス、市場セグメントを持つことが多いです。これらを整理し、それぞれの事業の特性や競争状況を把握します。

3. 市場データの収集と分析

○市場シェア
各事業が占める市場シェアを算出します。これは企業の競争力を示す重要な指標です。

○市場の成長率
各事業が所属する市場の成長率を評価します。これにより、市場の将来性や潜在的なビジネスチャンスを識別できます。

4. BCGマトリックスへのマッピング

上記のデータを用いて、各事業をBCGマトリックス上に配置します。

BCGマトリックスは、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によって1970年代初頭に開発された経営戦略のフレームワークで、企業の事業ポートフォリオを効果的に分析・管理するためのツールとして利用されます。
これは、市場の成長率と市場シェアを基にして、事業の位置を2×2のマトリックス上にプロットして分析します。

  • 星(Stars)・・・成長が早い市場で高いシェアを持つ。投資を継続して成長を追求する。
  • 金のなる牛(Cash Cows)・・・成熟市場で高いシェアを持つ。安定したキャッシュフローを生むため、利益を最大化する戦略を取る。
  • 疑問符(Question Marks)・・・成長が早い市場でのシェアが低い。投資の方向や取るべき戦略が不透明。
  • 犬(Dogs)・・・低成長市場でのシェアも低い。戦略の見直しや撤退を検討する。

5. 戦略の策定

BCGマトリックスの分類を元に、各事業に対する戦略を策定します。

  • 星・・・投資を増やし、市場シェアを拡大。競争力を維持・強化するためのイノベーションや新市場の開拓を検討。
  • 金のなる牛・・・収益性を最大化し、他の事業への資金源とする。コスト削減や生産効率の向上を追求。
  • 疑問符・・・市場での立ち位置を強化するための戦略が必要。新製品の開発やM&Aを検討することも。
  • 犬・・・事業の再評価。事業のリストラクチャリング、または撤退を検討する。

6. 戦略の実行

策定した戦略に基づき、具体的な行動プランを立て、実行に移します。

7. 定期的な見直し

市場環境や技術の進化、消費者のニーズなどは常に変わっています。そのため、定期的にBCGマトリックスの更新と戦略の見直しを行うことが重要です。

結 論

中堅企業、大企業においては、事業再構築や事業買収、事業売却などの経営戦略立案のための分析ツールとして頻繁に活用されています。
中小企業においても、BCGマトリックスは事業ポートフォリオの明確化や経営資源の最適な配分を支援する貴重なフレームワークとして活用できます。

・・・次回号に続きます。


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