離職率を下げるための施策![第545回]
…給与・能力・業務内容、3つの最適化を図る!
(毎週火曜日配信)税理士事務所様の経営を考えるコラム
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司
新しい社員を迎え入れる時節です。人事についてもう一度考えるきっかけにしてください。
自事務所やクライアントへの助言ネタにお使いください。
■大企業と中小零細企業では背景が違います。
大企業は、従業員や就職希望者に対して、自社に対する愛社精神、忠誠心、帰属意識等のブランドロイヤリティーを提供できます。相応のBIGカンパニーや著名なベンチャー企業は、社長個人の魅力ではなく、このブランドロイヤリティーが、継続的な就業や就職動機として機能します。
一方、中小企業、まして零細企業にブランドロイヤリティーは存在しません。社長個人がこの役目を果たさねばなりません。
言いかえると、「社長自身の器量やポテンシャルを越える人材は採用できない、仮に採用できても辞めてしまう」、ということです。
故に、より優秀な人材を採用したいのなら、社長自身が自らの器量やポテンシャルを高めていく努力を続けていくしか方法がありません。
悲観論ではなく、事実として認識してください。人事はこの認識から始めなくてはなりません。この前提条件を踏まえて、以下のテクニカルな話に言及します。
■雇用の安定のための人事における3つの最適化とは…
◆人事業務で一番大切なことは、最適化です。
すべてにおいて最適化のポイントを求め続けることこそ人事担当者の仕事です。中小零細企業では社長の仕事です。
最適化がなされておれば、人は概ね辞めません。採用もできます。離職率が極端に高いのは、人が採用できないのは、最適化できていないからです。
離職率が高いからレクリエーションを充実させる…間違えではありませんが、本筋ではありません。
採用できないから上手なキャッチコピーを考える、採用媒体を見直す…間違えではありませんが、本筋ではありません。
◆最適化とは…
- 【従業員の市場価値】と【会社が支払う給与】
- 【会社が従業員に求める業務】と【会社が支払う給与】
- 【従業員の能力】と【その従業員に求める業務】
の三つをバランスさせることです。
1.給与はその従業員の市場価値に適合させることが重要です。
給与はその人の市場価値に対して、安すぎても、高すぎてもいけません。
- 優秀な従業員を安く使えている、これは長続きしません。どこかで辞表がでます。
- 割高な給与を支払っている、これも長続きしません。どこかで社長のストレスが爆発します。辞めさせる羽目になります。
2.求める業務に応じた給与を支払ってください。
給与は求める業務に対して、安すぎても、高すぎてもいけません。
- 難解な業務を、薄給の人に求めてはいけません。どこかで辞表がでます。
- 安易な業務を、高給の人に割り当ててはいけません。どこかで社長のストレスが爆発します。辞めさせる羽目になります。
3.従業員の能力に合わせて業務を割り当ててください。
割り当てる業務は、従業員の能力に対して、難しすぎても容易過ぎてもいけません。
- 能力の低い人に、難解な業務を背負わせてはいけません。どこかで辞表がでます。
- 能力の高い人には、それ相応の業務を担ってもらいましょう。有効に活用しましょう。
言うは易く行うは難し…ですが、事業体の人事の肝は上記です。
(程度加減の)正解はだれにもわかりませんが、そのゴールの無い道をきわめることが人事です。
社長にとって大切なことは、上記の理屈を理解して、程度加減を是正しながら判断・行動することです。
◆絶対にやってはいけないこと…
- よくできる人材を、薄給を承知で便利に使い続けること
ある日突然辞表がでます。適正な給与(地位)の是正を実施しなかったことが原因です。 - 道理を越えた高給を支払って雇用する、慰留すること
長続きしません。社長の、組織内のアンバランスが限度を超えた時、辞めさせる羽目になります。そして、大きな罪を作ります。その人の人生を歪めてしまいます。 - 能力の低い人に、(精神論として)高度な仕事を任せること
訓練の機会・期間を設けずに、業務を何段階もステップアップさせること、これに耐え得るのはほんの少数です。大半の人は挫折します。
訓練の機会・期間を経ずにやってはいけません。
同様の理屈で…
○薄給で優秀な人材を求めること
○薄給で採用して高度な仕事を求めること
○ただただ高給を訴求して人を採用すること
■最後に二つ…
1.人事をある程度適正に行えば、人はそれ程辞めません。
小さな会社で人が次々に入れ替わるのであれば、それは人事がなされていないからです。是正が必要です。
一方、それでも一定の比率で人は辞めます。会社への不満とか?ではありません。人それぞれです。可能な限り円満に送り出してあげることが得策です。
2.力不相応の人材を求めてもうまくいきません。
これも達観が必要です。まずは(今の)力相応の従業員を求めましょう。優秀な人材が集まらないと嘆く社長様も少なくありません。
自社や自分の現状を棚にあげて、優秀な人材を求める社長様がいますが、これも無いものネダリです。
- 良い会社になった時に、優秀な従業員が入社します。良い従業員が集まるから良い会社になるのではありません。
- 今の実力相応の従業員が入社してきます。鏡の原理です。
- まれに、将来性に賭けて入社してくれる人もいます。(今の)力不相応な従業員の雇用は、社長自身が一本釣りするしかありません。
これをやってください。できなければあきらめましょう。
貴社の人事に対する考え方を、この機会にご一考ください。
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