会社を動かすな。会社の未来を創れ[第674回]

…「オン・ザ・ビジネス」という経営

(毎週火曜日配信)税理士事務所様の経営を考えるコラム
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司

貴社の経営、クライアントの経営支援のネタにご利用ください。

前回、「イン・ザ・ビジネス」という考え方をご紹介しました。
事業の中で働き続けることは、会社を維持するためには必要です。しかし、それだけでは企業は持続的に成長できません。

経営者には、もう一つの仕事があります。
それは、「オン・ザ・ビジネス(On the Business)」と呼ばれる概念の仕事です。
オン・ザ・ビジネスとは、現場から一歩離れ、高所・大所から会社全体を俯瞰し、未来を設計する経営です。

経営者は、現場で最も働く人ではありません。会社の未来を最も深く考える人でなければなりません。
理念を定め、ビジョンを描き、戦略を立て、利益構造を設計し、人が育つ仕組みをつくる。
そして、変化する市場の中で、自社が進むべき方向を示す。それこそが経営者だけに託された役割です。

この考え方は、決して新しいものではありません。
経営コンサルタントのマイケル・E・ガーバーは、著書『The E-Myth Revisited』の中で、「Work in your businessではなく、Work on your business」と説きました。
事業の中で働くのではなく、事業そのものを創り上げる仕事をせよ、という意味です。
この考え方を日本の中小企業経営者に伝えるため、「イン・ザ・ビジネス」と「オン・ザ・ビジネス」という言葉で整理して考えてみましょう。

経営者は建物を建てる職人ではありません。設計図を描く建築家です。設計図がなければ、どれほど優秀な職人がいても、理想の建物は完成しません。
会社も同じです。経営者が未来を描かなければ、社員は今日の仕事はできても、未来への挑戦はできません。

そのために必要なのは、「考える時間」を意識的に確保することです。
毎週二時間でも構いません。
毎月半日でも構いません。
現場を離れ、電話を置き、予定を入れず、自社を俯瞰する時間を持ってください。

  • 市場はどう変わるのか。
  • 顧客は何を求めているのか。
  • 自社の強みは本当に競争力になっているのか。
  • 社長が一か月不在でも会社は動くのか。

こうした問いを持ち続けることが、経営者の視座を高めます。

私は、会社の成長は社長の労働時間では決まらないと考えています。
会社は、社長が「どれだけ働いたか」ではなく、「どれだけ未来を考えたか」によって成長します。
さらに言えば、その未来を考える力は、経営者がどれだけ高い場所から会社を見つめているかによって決まります。

  • 経営者が変えるべきものは、社員ではありません。
  • 商品でもありません。
  • 設備でもありません。
  • まず変えるべきは、自らの視座です。

今日という一日を回す経営から、五年後、十年後を創る経営へ。それが「オン・ザ・ビジネス」の本質です。
経営とは、現在を管理することではありません。未来を創造することです。その未来は、経営者の視座から始まります。

ぜひ皆様には、「私は事業の中で働いているのか。それとも、事業そのものを経営しているのか」という問いを持ち続けていただきたいと思います。
その問いこそが、企業を持続的な成長へ導く第一歩になると、私は確信しています。

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