高収益は事業立地で決まる(三品和広教授)[第109回]

(毎週火曜日配信)税理士事務所様の経営を考えるコラム
GPC-Tax本部会長・一般社団法人銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…会計・税理士事務所の新しい事業立地は!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■会計・税理士事務所として、自事務所の将来の
 事業構想を練る場面において重要なことは、
 事業の領域を検証することです。

下品な例えですが、お宝の埋まっていない地面を
いくら上手に掘り進んでも、収穫はありません。
優秀な経営者のもとに、優秀な人材と多額の資金を投下しても、石炭の採掘での
事業化は難しいはずです。
採掘を行うなら、シェールガスか、メタンハイドレートの方が良いはずです。
事業の成功の可否は、そのマネージメントや狭義のテクニカルなマーケティング力が
主因ではないようです。事業領域の設定、すべてはここから始まります。
事業領域をどう設定するか、これこそが、経営の最大のテーマです。

■「週刊東洋経済、2015年9月12日、特集経営学の教科書」(東洋経済新報社)に寄稿された、
 「高収益企業の創り方」(東洋経済新報社、三品和広氏〔神戸大学大学院・経営学研究科
 教授〕)の著者である、三品和広教授の記事を引用して紹介させていただきます。

『…(高収益企業の研究を通じて)成功例に共通している点は一目瞭然だった。「事業立地」が
よいということだ。仕事の仕方の工夫や製品開発ではなく、そもそも「何屋さんをやるか」の
選び方が優れている。事業立地の考え方では、ある市場の中でどこにポジションするかよりも
むしろ、そもそもどの市場を選ぶかが重要になってくる。…』

『…事業の根底には立地(誰に何を売るか)があり、その上に構え(出荷するモノをいかに入手
して顧客に届けるか)、製品(いかに個別製品を魅力的に仕立てるか)、管理(いかに品質・
原価・納期を守るか)が重層構造を成している。…中期経営計画などで立地や構えに手をつける
ことなく、製品の刷新や管理の強化を打ち出している企業は数多くあるが、この次元で動きだした
ところで、高収益への転換に結び付いた事例はほとんどない。…』

『…では、どんな事業立地が好ましいのか。一つはアンアトラクティブな(魅力的でない)立地
だ。競合がやりたがらないと、それが最大の参入障壁になる。参入したい人が押し寄せている状態
を食い止めるのは、現実には非常に難しい。…また、提供するモノやサービスによって、顧客が
極めて大きな利得を手に入れることも、事業立地を選ぶときの重要な条件だ。面白いことに、
「儲かるから参入しよう」という人より、「本当に困っているひとを何とか助けたい」という人の
ほうがうまくいく傾向もある。…』

■『高収益は事業立地で決まる』(三品和広教授)
自事務所の経営を検証する折には、マネージメントや狭義のテクニカルなマーケティング方法
ではなく、自事務所の事業立地についての検証から始めるべきではないでしょうか。

○税務顧問業務は、税理士としての中核事業ではありますが、供給過多・飽和状態になりつつ
 あります。『税理士』という範疇の業務のみでの差別化は大変難解です。

○税務顧問業務の少なくない比率を占める業務が、IT化によって(さらに)合理化されようと
 しています。『税理士』という範疇の業務のみでの高収益化は容易ではありません。

○『税務業務』という事業立地に付加できる、お宝がありそうな周辺立地を模索してみませんか。

■自事務所の事業立地を検証し続けることは、所長にしかできない極めて重要な仕事です。
 であるにも関わらず、案外おろそかにされがちです。

○「目先の資金繰りが厳しい」と、緊急融資の相談に来られる企業(個人)様は少なくないはず
 です。

○「金融機関とのコミュニケーションが上手く行かず、トラブルになっている」と、相談に来ら
 れる企業(個人)様は少なくないはずです。

○後から検証すると、明らかな過大投資・財務無策も少なくありません。…等々

これらの相談の中には、上手に対応すれば、もう少し早めに手を打っておけば…解決できた
(そもそも問題化しなかった)問題も少なくありません。
可能な範囲で、緊急避難的な対応でクライアント(及び候補)支援に邁進しておられる先生方も
少なくありません。

■これらのニーズに本腰を入れて対応しませんか?

これらのニーズを真摯に受け止めましょう。そのためには、税務に付加して、財務機能を提供
しましょう。これが『新・税理士』、税務に付加する新しい立地です。この立地は、税務のすぐ横
にあります。真隣です。
※『財務』は『税務』のすぐ隣に存在します。『経営支援』などは、遠く離れた飛び地に存在
 します。導入の難易度には雲泥の差があります。

■5年後、財務に関する収益が、税理士・会計事務所様の収益の過半を占めるはず、私は確信して
 います。

○大きな潜在ニーズがあります。顕在化が始まっています。
○『税理士』から『新・税理士』へのパラダイムシフトのスタートです。
○財務分野は、税理士・会計事務所様には、あらゆる点で親和性の強い業務です。

『新・税理士』導入のためのプログラムは出来上がっています。
早めのご参加をお待ちいたします。

貴事務所も、この機会に銀行融資プランナー協会とのお付合いを始めてみませんか。
まずは、研究会No.1にご参加ください。
実例を使って、体系的・網羅的・論理的に解説いたします。

当研究会は、延べ860名超の税理士様、職員様が受講された実績のある研究会です。
どの講座からでもご参加いただけます。
※6講座以上の受講をお薦めしています。