7.金融機関対応の大原則は、借りられる時に借りられるだけ借りることです。
平成27年2月
税理士・会計事務所様へのメッセージ
GPC-Tax本部会長・一般社団法人銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司
金融機関が貸し出す傘はすべて「日傘」(○)です。
「雨傘」(×)ではありません。
◆経営者は、「必要な時に必要な金額を借入れたい」と考えます。
適時適量発想です。正論ですが、対金融機関に対してはこの論理が通じません。
金融機関が貸し出す傘はすべて「日傘」(○)です。「雨傘」(×)ではありません。
貸し出す資金が預金者から預かった預金だからです。損失を出すわけにはいきません。
故に金融機関は、企業に対して健全かつ前向きな資金しか貸し出せません。
融資を受ける側の企業は、必要な時に必要な金額の借入れができるように、常にその健全性を維持しておかねばなりません。資金が必要な時には常に健全であるべきなのです。
これを厳守できるなら、「必要な時に必要な金額を借入れたい」との願いは叶います。
一方、企業経営には、「山」あり「谷」あり、「まさか」もあります。
「谷」や「まさか」の時には健全性が崩れることもあります。このタイミングと資金を必要とするタイミングが重なった時は、資金は必要だけれども融資は受けられない状況に陥ります。資金が必要な時に健全性を維持する、これは容易ではありません。
◆「借りられる時に借りられるだけ借りておく」ことこそ最善の策です。
健全な時に、近未来に遭遇するかもしれない「谷」や「まさか」に備えて資金調達を継続して行い続けること、これ以外に方法が見当たりません。
これこそが、金融機関対応の大原則と確信します。
◆『金融機関が「借りてくれ」と頼んできた。・・・
「金融機関が「借りてくれ」と頼んできた。当社は大丈夫だ。」とおっしゃる社長様がおられます。
その通りです。金融機関は今、この瞬間については、貴社が貸し出せる健全な会社であることを表明しています。ただし、この表明は、今、この瞬間のことであって、近い将来を担保しているわけではありません。
例えば、3カ月後に「谷」や「まさか」が起きた時、同じ金融機関であっても、足元の悪さを理由に融資を謝絶するかもしれません。数カ月前の言動を担保してくれません。
◆「借りられる時に借りられるだけ借りておく。」
ご理解いただけましたでしょうか?
- 金融機関が「借りてくれ」と頼んできたら、有り余るほどの余裕がある場合を除いて、借りておきましょう。
- 売上が伸びてきたら、増加運転資金を早めに調達しておきましょう。
- 運転資金の借入れは、一年が経過して一年分の返済で元本が減ったら、元の金額まで巻き返して借り直してください。
- 金融機関との接点は、可能な限り持つように努力しましょう。
- 創業時には、可能な限り創業融資を受けてください。
- 創業間もない企業は、早めに日本政策金融公庫と保証協会付融資を受けて、実績を作りましょう。
- 融資を受けた後も、金融機関とは誠意を持ってお付合いしてください。
- 資金使途違反などはくれぐれも起こさないようにしましょう。
◆結果として無駄な金利を払い続けることになっても、
これはこれで良いと考えましょう。
二つのリスクが想定できます。
余分に資金を借り入れて、結果として無駄な金利を払うリスクが一つ目です。
余分と判断して借入れを起こさなかったために、資金に詰まるリスクが二つ目です。
一つ目のリスクは読めるリスク、ある種の保険料です。それに比べて二つ目のリスクは、起きてはならないリスクです。底が読めません。
一つ目のリスクを取るべきではないでしょうか?
金融機関が貸し出す傘はすべて「日傘」(○)です。「雨傘」(×)ではありません。
肝に銘じてください。
ゆえに、金融機関対応の大原則は、『借りられる時に借りられるだけ借りること』です。
論理矛盾はないはずです。